2005年05月01日

じゃんけん三国志

1 石国の軍師、鋏国へ発つ

三つの大国が、大陸の覇権をかけて争う時代があった。
世に言うじゃんけん三国時代である。

三つの国の名は、石、紙、鋏といった。

石国の王、すなわちわたしは、石国一の軍師と称される者を呼んだ。

わが石軍は、その尋常でない硬さから、
鋏軍の得意とする切れ味を封じ込めてことごとく勝つことができる。
しかし、紙軍はあの包み込む戦術を得意とするがゆえに、
わが石軍はすべて包み込まれてことごとく負けるであろう。
ならば、石が天下を取るためには、どんな策を用いるべきか。

わたしが軍師に尋ねると、軍師は言った。

「わが国の天敵である紙にもまた、弱点がございます」

たしかに紙軍にも弱点はあった。紙軍は包み込む戦術を得意とするが、
その薄っぺらさゆえに、鋏軍の切れ味にはことごとく負けてしまうのである。

「これを利用しない手はありません」

どう利用するというのだ。わたしは軍師の言葉に耳を傾けた。

「両国を互いに相食み合わせるよう、わが国が仕向けるのです。
 するとどうなりましょう?」

鋏国がことごとく勝つに決まっている。

「そうです。そして残った鋏国を、わが石国はゆっくりと料理すればよい」

おおっ、なるほど! わたしは改めてこの軍師の智謀に驚かざるを得なかった。

「これを二虎競食の計と申します。まずは後顧の憂いである紙国を、
 戦わずして亡ぼすのが上策というものです」

よし、早速計を仕掛けようじゃないか。

「鋏国を説く必要がございます。
 しかし、敵もさる者、この計を見破るやもしれません。
 ですから、わたしめが直接、三寸の舌をふるって鋏国を誑かして参りましょう。
 わたしめが留守の間、くれぐれもご用心を」

そう言って明朝、わが軍師は鋏国に向かって出発したのだ。頼んだぞ。


2 紙国の軍師、石国へ来る

軍師が発った明くる日、石国に使者が訪れた。
紙国からの使者だという。紙国から?
 
わたしは用心しながらも、紙国の使者と謁見した。
紙国の使者はあたりを見回した後、言った。

「最近の鋏国の不穏な動きについて、石国はご存知でありますか?」

鋏の不穏な動き? いやそんなものは聞いていない。どんな動きなのだ?
わたしは紙国の使者から情報を求めた。

「鋏国に稀代の軍師がついた、との噂でございます。
 その軍師が、天下の軍師が思いもよらなかった、
 まったく新しい策を持っておる、とのこと。
 その策があれば、必ず残る二国を討つことができ、
 必ず天下を取ることができる、という噂です」

必ず天下を取る策? そんな策があるのだろうか?
少なくとも、わが軍師が考え出したあの二虎競食の策以外に聞いたことはない。

「どんな策なのか、現在わが国で急ぎ調べておりますが、
 まったく見当がつきませぬ。しかし、この策の噂が本物ならば、
 いま、鋏国を討たねば、天下はやがて鋏国のものになるやもしれませぬ。
 しかし、わが国はご存知のとおり、鋏国には手も足も出ませぬ次第」

わが国の天敵、紙国も歯が立たないという鋏国。うらやましい。
だが、その鋏国にわが石国は余裕で勝つことができるのだ。
ああ、じれったい関係だ。紙国の使者は言葉を続けた。

「しかし、石国が鋏国に攻め入れば、
 鋏国の野望が崩れ去るのは火を見るより明らか。
 鋏国のえたいの知れぬ策が実行される前に、
 是が非でも鋏国に攻め込んでいただきたい。
 かの国を攻めるはいましかありますまい」

なるほど。そうきたか。

紙国にとってみれば、鋏国こそ天敵なのだ。
さては、その鋏国に勝つことができるわが軍を利用して、
その後わが国を攻めるつもりか。
この男、わが国に二虎競食の計を仕掛けにきたのかもしれぬ。

さらに使者は言葉を重ねた。

「万が一、石国が鋏国に攻め込んでいただけないのなら、
 せめてわが国と同盟を結んでいただきたい。
 そして鋏国が攻めてきたとき、わが国を助けていただきたい。
 鋏国に勝てるのは、石国しかございませぬ」

こいつは困った。

わが国は鋏国に紙国を攻めさせるために軍師を放ったのに、
ここで紙国と同盟をすると自らが仕掛けた鋏国を自ら迎え撃たねばならない。
つまり、何をやっているのかわからん。

しかし、無碍に断ると紙国も黙ってはおらんだろう。
そうなったら、石国が滅びてしまう。

しかし、鋏国もそうバカではあるまい。紙国を本気で攻めることはないだろう。
鋏国が紙国を殲滅すれば、残る国は鋏と石。
こうなれば天下はわが石国のものとなる。
そんなバカを鋏がすることはありえない。

わたしはそう説明して同盟を断ろうとした。

「しかし、鋏国稀代の軍師の策次第によっては、ありえないとも言えません」

紙国の使者は食らいついてくる。

ならば、紙国がわが国をもう決して攻めない、と約束するならば、
同盟を結んでもよい。
そのあたりでわたしは手を打つことにした。

「承知いたしました。わが国は貴国に決して攻め入ることはないでしょう。
 ありがたき幸せにございます」

紙国の使者は去った。何か嫌な予感がする。


3 石国の軍師、首尾上々で帰国

一週間ほどたって、わが石国の軍師が帰ってきた。

「殿、ただいま帰国しました。首尾は上々です。
 明日にも鋏国は紙国へ攻め入ることでしょう。
 それよりも、留守中は何ごともございませんでしたか?」

紙国より使者が来て、鋏国を攻めよと進言してきたことを告げると、
軍師は色をなして驚いた。

「なんと! それはいけませぬ」

それはわかっている。わが軍師の策を紙国は用いようとしたのだろう。
わたしは冷静に処理したことを告げた。

「危ないところでした。殿が賢明で何よりです」

ただし、紙国と同盟を結んでいる。

「同盟? それではわが策の意味がないのではございませんか?」

これは紙国がわが国に攻めてこないようにするための安全策である。
鋏国が紙国を攻めれば、反故にすればよい。戦国の習いである。

それよりも、鋏国の稀代の軍師とやらが気になる。
わたしはわが軍師に鋏の軍師について尋ねた。

「会いました。これが愚物で」

何? 必ず天下を取る策を持っている、
と紙国の使者が言っていたが、大丈夫なのか?

「ありえません。必ずわたしの舌に乗せられて、紙国を攻めるでしょう。
 バカと鋏は使いよう、でございます」

ならば安心である。わたしは鋏が紙に攻め込むのを楽しみにしながら、
ぐっすりと眠りについた。


4 鋏国の鬼謀!

明くる日、わたしと軍師のもとに急報が入った。

「鋏軍が紙国へ攻め込んだようです!」

行ったか! わたしはほくそえんだ。

「紙軍のうち、一軍はわが国に向かっている、とのこと」

その紙の一軍はおそらく先日の同盟による救援の依頼だろう。
もちろん断る。これで紙国は滅亡する。その後、鋏国を攻める。
完璧だ。これで天下が取れる。さすがはわが国一の名軍師の策である。

「祝杯を上げましょう」

こうしてわたしは石国の武官、文官を集め、
陽のかげらぬうちから早くも宴を催した。

ついにわが石国が天下統一の偉業を成し遂げる。
それもひとえに、優秀な人材のおかげにほかならない。
今日はおおいに飲んでもらおう。

「杯を掲げよ」

「乾杯!」

そして宴はたけなわになった。

そろそろ紙軍が来る頃だろう。
かわいそうに、追い返すのみだ。いや愉快だ。
わたしは軍師の背中をバンバン叩いた。もちろん、酔っている。

「ハッハッハ。どうやって追い返してやりましょうか?」

その一言に、わたしは杯が止まった。

おい、どうやって追い返すのだ?
援軍を断った結果、逆上して攻め込まれたら、
わが国は亡んでしまうではないか? 

そう言うと、軍師は顔を真っ赤にしながら説明した。

「同盟を結んだのでしょう? 決して攻め込まないと紙国は約束したはずです」

それはわが国が鋏軍を撃退すればの話である。
その気がないなら、話は別ではないか。
しかし、わが軍師はまだ意味がわかっていない。

「ならば、怒らせないよう、丁重にお断りしましょう」

何を悠長なことを言っているのだ。
それどころか、わが国に攻め込むぞと脅されて援軍を強要されるにちがいない。
急いで援軍の用意をしなければわが国は亡んでしまう。

そこへ、護衛の者が走り込んできた。

「か、紙軍がやってきました!」

丁重にお出迎えしろ!

「その数、五万! そして、攻め込まれています!」

護衛は最後にそう叫ぶと、力尽きて倒れた。
え、なぜだ? 救援の依頼ならばわかる。
だがなぜ救援の依頼もせず、いきなり攻め込んでくるのだ?
すると軍師が蒼ざめた顔で叫んだ。

「や、やられた! 紙軍の後ろにいるのは、鋏軍です!
 紙軍を武力で操っています! 
 そうか、これが必ず天下を取れるという鋏の策か!」

な、なるほど! わたしもようやく事態を飲み込んだ。

鋏はわが石の策に踊らされて紙を攻めたかに見えた。
だが実際は、鋏は紙を攻めると同時に、紙を操って石を攻撃してきたのだ!
つまり、同時に紙と石を滅ぼしにかかったのだ。
何たる鬼謀! 鋏め、さすがに切れるわ!

鋏軍に操られた紙軍に、わが石軍はなす術もないまま蹴散らされていく。
わが居城はみるみるうちに五万の紙軍に囲まれ、
わたしの命ももはや風前の灯し火にみえた。

「だめです。もう持ちません!」

軍師が悲鳴をあげる。くっ、もはやこれまでか。無念である。


5 石国、起死回生の策

「……殿。それに軍師殿。最後まで諦めてはなりませんぞ」

後ろから声をかけた者がいる。

わたしと軍師が後ろを振り向くと、そこにひとりの勇ましい武将が立っていた。

「わが軍最強に固い将、猛固鉄ではないか」

この武将も、先ほどの宴でほどよく酔っていて顔が真っ赤だった。

「殿。わたしもすっかり天下を取れるものと思っていたのに、
 なかなか思うようにはいきませんな。
 こうなったら一か八かの賭けに出るしかありません」

賭け? わたしは猛固鉄の言葉に思わず息を飲んだ。

「紙軍を後ろで操る鋏軍を攻撃するのです」

なんと! いや、この紙軍の包囲を突破するのはいくら猛固鉄でも無理だろう。

「しかし、このまま座して死を待つわけにはいきませぬ。
 殿と石国を守るため、命をかけて包囲を突破しましょうぞ」

「いや、お待ちくださいおふたりとも」

軍師は鋭い顔つきに戻っていた。

「猛固鉄殿。できるだけ早い馬と速攻の得意な部隊を急ぎご用意くだされ。
 そなたを無傷で鋏軍の心臓部へ送り込む起死回生の策を試みましょうぞ」

死中に活あり、なのか?
いや、いまはっきりと言えることは、
わたしの命運はこの軍師のいう起死回生の策に委ねられているということだ。

軍師は続けた。

「わたくしめ、このたびは鋏の計略に踊らされ石国をかかる憂き目に
 遭わせてしまいましたが、これでも石国一と言われた軍師です。
 ここは汚名をそそぐべく、命をかけて紙軍を説得し、
 猛固鉄殿が鋏軍へ突撃する道を開いてごらんにいれましょう!」

そう言うと軍師は前方へ歩み出て手をかざした。

「紙軍の兵士よ! わが言を聞けい!」

「……おい、とうとう軍師が出てきたぞ!」

「降伏するつもりか?」

 紙軍の兵士はいったん攻撃の手を緩めて耳を傾けた。わが軍師は言った。

「なんじら、石国を攻め滅ぼしていったい何が残ろうか!」

「……紙国と鋏国だ!」

「左様! 残るは紙と鋏! よって紙国が敗れるは必定!
 ならばなんじら、何を好んで自滅の道を急ぐか!」

 すると紙軍の中からひとりの武将が現れた。

「石国の軍師よ! そんなことはわかっている!
 できるならばわれわれも石を滅ぼしたくはない!
 だがわれわれは不覚にも鋏の計略にかかり、
 武力をもって脅されいまや鋏軍の手先となる始末。
 もはやわれわれに退路などない! 行くも地獄、帰るも地獄!」

「あわれなり、鋏に誑かされ迷走する紙軍よ。
 しかし、かりそめにも石と紙はついさきに同盟を結んだばかり。
 いずれにしても死あるのみならば、なにゆえ約をたがえて恥の上塗りをし、
 後世にその汚名を残さんとするか!」

「!」

「そしてここに紙国を救う起死回生の策があるとすればどうか!」

「えっ!」

「よく聞けい、紙軍の兵士たちよ! ここから鋏軍までの道を開けよ!
 ならばわが石国の誇る将、猛固鉄が城門より精鋭を率いて風のごとく疾走し、
 なんじらを苦しめる鋏軍を瞬く間に一掃するであろう!」

「なっ!」

「いまや鋏軍はわれわれの共通の敵。これまでのことは水に流し、
 ともに力をあわすれば鋏の野望を打ち砕くこと、昼寝するよりたやすいわ!」

「その言葉、まことか?」

「何を偽ることがあろう! われわれの言はそれこそ石のように固いわ!」

そこに猛固鉄が部隊の用意を整えて紙軍の前に姿を現した。
そして地響きのするような声で叫んだ。

「ええええい! 紙軍よ、わが道を開けえい!」

「……わかった! わが紙軍よ、鋏までの道を開けえい!」

軍の武将が叫ぶと、おびただしい紙軍の包囲のど真ん中が割れて、
一筋の長い道が現れた。おおっ、信じられん! まるで十戒だ!

すかさずその道を駆け抜けるのは猛固鉄の部隊である。

「駆けい駆けい!」

あわてたのは鋏軍である。

「お、おい! 包囲を解くな!」

「ええい、閉めんか!」

「石の武将をただちに潰せい!」

鋏軍の兵士は紙軍に圧力をかけた。

「急げい! わが疾風の精鋭たちよ!」

だがそこは鋏軍には逆らえない紙軍。
その圧力に、石のために開かれた道は少しずつ狭くなっていく。

(くっ、間に合わん……)

いよいよ道が閉じようとしたその刹那、楼上からわが軍師の声が戦場に轟いた。

「こらえよ紙軍の兵士よ! いまここで道を閉ざせば鋏の天下!
 ならば、この道はなんじらの希望の道でもあろう!」

「!」

「天よ、わが道を開けええい!」

猛固鉄が叫ぶとほとんど同時に、道が再び大きく広がり始めた。
そして猛固鉄は紙軍の分厚い壁を抜けきったのである。
抜けた! たしかに抜けたぞ!

そしてついに猛固鉄は鋏軍と対峙した。

「なんと、どうみてもわずか数百ではないか。
 これだけの少数で五万の紙軍を操っておったとは!」

対する猛固鉄は精鋭五十である。

「ええい、わが石の精鋭たちよ!
 ここまでくれば兵の数は問題ではない。鋏軍を一掃せい!」

「おう!」

鋏軍は一気に崩れた。
猛固鉄の部隊はその壊走する鋏軍を掃討すべく馬に鞭を入れた。
数分後、鋏軍は残らず片付けられた。

「よし! やったぞ」


6 恐るべき誤算

こうして猛固鉄は石と紙の兵士の大歓声を浴びながら城へさっそうと凱旋した。
そして城門へと駆けながら楼閣で待っているわたしに向かって叫んだ。

「殿! 石国と紙国は助かりましたぞ!」

「おおっ!」

いっそう大きな歓声がこだました。わたしは背筋が震えた。

「殿、凱旋将軍にお言葉を」

わが軍師が目に涙をためながら言っている。
よし、よくやってくれた猛固鉄よ!
おまえは最高の武将である。石国の英雄である!

「は、はっ! ありがたきお言葉!」

わたしが賛辞を述べると、猛固鉄は下馬して平伏した。
わたしは気分よく続けた。

そして紙軍の兵士よ!
協力、まことに感謝する。
よくぞ鋏軍の圧力にこらえてくれた!

すると紙軍の武将が前へ現れて言った。

「石国の王よ! そして軍師殿、猛固鉄殿!
 よくぞわれらを窮地から救ってくれた。この恩は一生忘れん」

いやいや、困ったときはおたがい様である。
同盟を結んだ仲ではないか。

わたしがそう言うと、紙軍の武将は恐るべきことを言い放った。

「その同盟により、さっそくだがわが紙国へ同行願いたい」

え?

「わが国はいま鋏軍に猛攻を受けている最中。
 鋏に勝てるのはさきほどと同様、石国しかいまい!」

ちょ、ちょっと待ちたまえ。

「待てぬ。もはや一刻の猶予も許されない。
 ただちに行軍の準備をなされい。
 さもなくばわが紙軍は石国を武力で脅してでも連れていくがそれでもよいか!」

げっ! わたしと軍師は顔を見合わせた。
……鋏軍を生かしておくべきだったかな?

紙の武将はたたみかけてくる。

「どうするのだ! 行くのか、行かんのか!」

……行きたくない。どうしよう。

「石国の言はそれこそ石のように固いのではなかったのかね?」

い、行かせていただきます!

「よし。ならば五万の兵を用意していただこう」

……そんなにまだいるのか?

「とにかく、いるだけかき集めて行きましょう……」

こうしてわが石国は勝利の美酒に酔いしれる間もなく、
いやすでに猛烈に酔ってはいたが、紙軍に操られて紙国へと急き立てられた。

「よいか! ここから紙国まで約半日、休みなく馬で駆けぬける!
 石軍が先頭に立ち、われわれはその後ろを進む。
 離反の心ある者は同盟を破棄したものとみなして
 討ち捨てるからそのつもりでおれい!」

紙軍の武将は全軍に号令した。


7 石頭の由来

しかし、にわかに信じがたい展開である。

ひたすら馬を駆りながら疲れきったわたしは横を見た。
並んで走る軍師は声すらない。

おい、猛固鉄。おまえ英雄だったら何とかしてくれよ?

「いや、わたしも鋏には滅法強いんですが、紙にはまったく手も足も出ません」

うおえっ。気分が悪い。吐き気がする。

「そういえば、まだ酒が抜けませんな」

「こらそこ! 私語はやめんか」

あ、すみません……。

まったく、石国の王たる者がこの惨憺たる行軍である。
が、まあ仕方ない。

人の一生なんてどうせ泥まみれよ。
それでもおれは死ぬまで生き抜いてやるぞ。


半日死ぬ思いで駆け続けると行く手に城が見えた。

「あれだ! 紙国の城だ」

すかさず後ろから紙軍の武将の声が飛んできた。

「石軍! ただちに鋏軍を強襲せよ!」

もう死にそうである。

だが、城は思ったより静かだった。
そしてよくよく見ると、城内では鋏軍が武力を生かして後ろ側でのさばり、
紙軍が前方で陣を布いて石の援軍に備えていたのである。

わが軍師はため息をついた。

「また鋏のやつら、紙軍を後ろから操っています」

さすがである。やはり鋏は頭が切れるようだ。

「殿。どうやらわたしたちも、鋏の使い方を覚えなければなりませんね?」

そうである。わが石軍も頭を使わねばこの時代を生き残れない。
紙を倒すために、鋏を利用するのだ。

だがそのためには、また紙軍の包囲を解かねばならん。
ここはまた軍師の出番である。
もう一度紙軍の兵士を説得し、道を開けさせよう。
そこに猛固鉄をもう一度突っ込ませる。これしかない。

「わかりました。それで猛固鉄殿。今度は鋏を全滅させてはいけませんよ?
 捕らえて利用しなければ石国に帰れませんからね」

「了解した」

「紙軍の兵士よ! わが言を聞けい!」

こうしてわが軍師は城に布陣する紙軍を再び説得し、
また道をこじあけさせてそこに猛固鉄を突っ込ませた。

そして猛固鉄は鋏軍を手早くまとめて
そのまま城外へ連れ出し今度は残る紙軍を駆逐。
無事わが石軍は石国に帰還することができたのである。

この三国動乱の決着はどうなったか。
もうみんないい加減疲れたので仲良く暮らすことにしたという。
ただ、後世の人々は、
鋏の使いようをまちがえるようなバカ者をたとえて

「石頭」

と呼ぶようになった、と聞いている。わしのことやないかい。


じゃんけん三国志 終
posted by marl at 20:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 空でうたたね物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どうも!幸せまんです!
物語その4もいいー!人間は愚かでおかしいから楽しい!
marlさん!!新ブログもいいねー!ランキングもやって勉強してますねー!
すごいなー!自分もランキングトライしてみました!
では!お互い輝こう!
Posted by 幸せまん at 2005年05月10日 23:11
どうも!幸せまんです!
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Posted by 幸せ at 2005年05月10日 23:11
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